「知っていますか?」
今日も、彼女は意味深に声をかけてくる。

私が持っている病気と青春ブタ野郎というラノベ。(2)

前回→私が持っている病気と青春ブタ野郎というラノベ。(1) - そうでしょう、そうでしょう

 

注:この記事では「青春ブタ野郎シリーズ」のネタバレを多分に含みます。

 

こんにちは。神無月です。ここまで、浪人生活時代に私がかかった病気についてつらつらと書いてきました。今回はその後についてになります。

 

あまり期待していたわけではなかったのですが、大学に入学してからも症状が完全に無くなることはありませんでした。むしろ入学したての頃は最悪で、周りに誰もこの症状を理解してくれる人がいない中、新しいイベントをこなしていかないといけませんでした。

怖い毎日でした。また、外に出るのが怖くなるんじゃないかと思いました。

それでもなんとかやっていけたのは、高校時代の友人達のおかげでした。浪人生活中だけでなく、大学が始まってからも寄り添ってくれました。彼らが意識してそうしてくれたのかは分かりません(恥ずかしがって本音は言わないだろうし…笑)が、普段通り、そこにいて話をして聞いてくれることこそが何よりの助けになりました。今でも感謝してもしきれません。

そんな手助けもあって、迎えた夏前。私はふと寄った本屋で、1冊の本に目が留まりました。

f:id:wz556:20170330111012j:plain

 

それは「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」という本でした。

実は私は高校時代、この作品を書いていらっしゃる鴨志田先生が書かれていたラノベさくら荘のペットな彼女」シリーズを愛読させていただいていました。主人公の空太が歩む毎日が、自分が過ごしていた毎日と重なる部分があったためとても面白いなと感じたのがきっかけです。その繋がりで、この青春ブタ野郎シリーズのことも巻末宣伝なんかで知っていたのですが、ついぞ読んだことはありませんでした。

その時既に青春ブタ野郎シリーズも続刊が出ていて、あらすじを見るとさくら荘シリーズのように青春モノのようだったので、「またハマるかもしれない」と思い購入し早速読んでみました。

初めて「バニーガール先輩」を読み終えたときの感動は忘れられません。主人公の咲太に感情移入すればするほど、彼・彼女たちのことが愛おしくて仕方なくなっていきました。それほどまでに衝撃を受けた作品に出会った私は、すぐに続刊をまとめ買いしました。

そしてその続刊の中で、私は1人の少女に出会いました。

名前は「牧之原翔子」。

優しくて、人に対して思いやりのある彼女。主人公である咲太を、七里ガ浜の海で励まし続けてくれた、究極的に言えば普通の女子高生でした。…彼女が実は2人いるという事実が明かされるまでは。

1人は、女子高生の翔子さん。七里ガ浜で咲太が落ち込んでいるところに、「知っていますか?」といつも意味深に声を掛けてくれた彼女。

もう1人は、小学生として咲太の前に現れた翔子ちゃん。心臓に難病を抱え、苦しみながらも自分の周りの人、咲太の事を1番大切に考え、幼いながらも立派な行動をしていた彼女。

この二人の翔子が作中で零した言葉のひとつひとつは、苦しんでいた私の胸にどれもすっと響いてきました。何のために毎日を生きていくか。たとえ痛みや苦しみを背負っていたとしても、諦めずに生きていくことの大切さ。そういった事を彼女は教えて、気付かせてくれました。そのおかげで、今の私があると思います。

 

こんなふうに考えられるようになったのはごくごく最近のことですが、この病気にかかって良かったなと思います。青春ブタ野郎シリーズの中で咲太も思っていますが、当事者にならないとその人の苦しみは理解できないと思います。それもそのはずで、健康でいる間はその苦しみを知る術がないのですから。ただ毎日を生きている間に、「だれそれが病気になった」とか「だれだれが事故にあった」とか聞いて、悲しい気持ちになったりする事はあるかもしれません。でも、あえて誤解を恐れずに言えば、それは当事者やその家族の苦しみを理解したことにはならないと思います。むしろ、そんなことができる人はいない筈です。同じような経験をした、境遇にあったからこそ、本当の意味でそういう人たちを理解してあげられることができると思います。私自身も、以前ならこの青春ブタ野郎シリーズを読んで翔子ちゃんに出会っても、ここまで心を揺り動かされることは無かったと思います。しかし私なりに苦しい毎日を過ごすうちに、苦しみを分かち合うというか、少なくとも以前よりは理解してあげられるようになった気がします。これに気づかせてくれたのも、ひとえにこのシリーズのおかげです。本当に感謝しています。

「苦しい毎日を過ごしているのは私だけ」「周りの健康な人が羨ましく、そして妬ましく見えてくる」

こういう考えを抱いていた時期も長くありました。世界はなんでこんなにも私にだけ理不尽なのだろう、と。

しかし「翔子」を通じてそうではないことを知りました。世の中には私よりももっと重い病気を抱えながらそれでも懸命に生きている人、障害を抱え、世間の冷たさにも屈せず毎日を過ごしている人…数えればキリがないほど。テレビなんかを通じてそういう人がいることはもちろん知っていましたが、白状すると以前の私はそれらをどこか遠い世界のことのように感じていました。それを今回改めて気が付かされたのです。

さらに私の目に眩しく映ったのは、長い間苦しみを抱え、余命が尽きるとされたその後に叶えたいことすら望むことが出来なくなってしまっていた翔子ちゃんが、それでもなお周りの健康な人に感謝し続け、思いやり、毎日を懸命に生きている姿でした。この作品でそんな彼女に出会ってから、私の考えは大きく変わりました。周りの人に常に感謝を抱くこと。朝になれば日が昇って、大学へ行って、友達と語り合って、帰って、ご飯を食べて、寝る。そんな当たり前の毎日が目の前にあることの大切さ、そしてそれがいかに幸せなことであるかに気がつかされました。

私自身、作者の鴨志田先生がこの作品を通じて訴えたかったことが全て理解できたとは思っていません。それでも、この牧之原翔子というキャラクターを通じて、私がまだまだ若い頃にそのような事を学べたのは計り知れないほど大きな幸運でした。本当にありがとう。次は、私がこの作品を通じて学んだことを、他の苦しんでいる人や助けを求めている人に伝えていけたらなと思っています。私だけでは微々たる力にしかならないかもしれませんが、翔子ちゃんから貰った勇気を持って、これからの人生を歩んでいきたいと思います。

 

最後に、どうしても書きたいことがひとつだけ。それは、死んでしまったらどうにもならないということ。私も、この世からいなくなってしまいたいと思ったことはこれまでの人生の中で幾度となくありました。全部投げ出してしまえばどんなに楽だろうか。死を選べば、気にも留めてくれなかったみんなが自分の方を向いてくれるだろうか…と。

しかしそれをしてしまっては、その先の人生に待ち構えているたくさんの幸せにたどり着けないことになります。私だって、この青春ブタ野郎シリーズに出会うこともなかったわけです。だから、もし死を意識しているような方がいるなら伝えたいのが、決して自分を諦めないでということ。今は辛すぎて、消えてしまいたいと思っているかもしれない、明るい未来なんて絶対自分には来ないと思っているかもしれない。けど、そんなことはないから。終わりのない夜はないように、いつかきっと、幸せがやってきます。だから、諦めないで。

もし途中で挫けそうになったら、思いっきり泣けば大丈夫。気分が楽になるはずだから。そして、本を読むといい。この青春ブタ野郎シリーズでもいいし、何か同じような境遇にある登場人物が出てくる本が良いと思う。きっと、少しは前を向けるようになるから。私がお伝えしたいのはこんなことです。

 

本当に最後になりますが、この作品を生み出してくださっている鴨志田一先生、挿絵を担当していらっしゃる溝口ケージ先生、編集者さんや関係者さんに精一杯の感謝を。気持ちが届くかは分かりませんが、これからも応援しています。また、ここまで長文に付き合ってくださった当ブログ訪問者の方にも感謝を。ありがとうございました。

 

この作品に出会えて、本当に良かった!

Copyright © 2017 wz556