「知っていますか?」
今日も、彼女は意味深に声をかけてくる。

夏の終わり

吹き抜けていく風はまだ冷たくて、それでいて同時に仄かな温もりを感じさせる。桜の蕾は依然として開く気配を見せていないが、予報ではあと2週間ほどで開花の頃となるらしい。

春がやってくる。

「おまたせ…待たせちゃって悪かったわね」

背後から声がして、衛宮士郎はそんな桜の木から視線を外した。

「いいや、俺も今来たとこだよ。遠坂」

振り返ると、制服に身を包んだ遠坂凛が小走りになってやって来るところだった。側にやってくるまで待ってから、再び枝に視線を上げる。凛はなぜか半笑いを浮かべていた。

「衛宮くん、なに黄昏れちゃってるの?まだ、そんな歳じゃないでしょうに」

「うるさいな、別に黄昏れてたわけじゃないよ」

「ほーん?傍から見ると、遠い昔のことを寂しく回想しているおじさんみたいな雰囲気出てたけど?」

体を斜めに倒して、意地悪そうな表情でこちらの顔を覗き込んでくる凛。その目は『ほら、図星でしょ?』と言わんばかりだ。

俺はゆっくりとため息をついた。

「この木いっぱいに桜の花が咲いたら、また遠坂と見に来たいなと思ってな」

「なっ」

隣でなにやら慌てたように両手を頬に当てて俯いていたが、俺は構わず続ける。

「だって、今まで色々と忙しくてあんまり出かけられなかっただろ?春先なら時間もあけられそうだし…」

「だ、だからってなんであたしなんかと」

「そりゃ、」俺は体ごと凛の方に向き直る。「遠坂のことが好きだからだろ」

 「〜〜〜〜ッ」

耐え切れなくなったように、凛は下を向いたまま喘いだ。そのまま胸ぐらに殴りかかってくる。

ぼすん。

「あ、あんたって人は…いっつもなんで…こんな…」

手をグーに握ったまま、繰り返し殴られる。いや、それはもはや力なく叩いていると言ったほうが良いような、そんなへろへろのパンチだった。

「お、おい遠坂?!」

「人の気持ちも知らないで散々振り回しておいて…何よこれ!」

「落ち着けって遠坂!」

「落ち着いてるわよ!」

俺が彼女の腕を掴もうとするのと、凛がキッと睨みつけてくるのは同じタイミングだった。しかし凛の顔は一面桜色に染まっていて、怒っているというよりかはむしろ…

「なぁ、遠坂」

「なに」

「その…なんか照れてる?ってうわ!やめろって!」

「このバカ!バカ士郎!あんたなんかもう知らないんだから!!」

また殴られるのかと思ったが、何を思ったか彼女は俺の腕を掴むとそのままずんずん引っ張っていく。

「おい遠坂、行くのはいいんだが、もう少しそこのベンチにでも座ってゆっくりしてもいいんじゃないか?」

「ふん、別にいいわ」

凛が手を離す。俺はそのまま立ち止まった。

「だって、」

彼女がゆっくりとこちらに振り返る。彼女は、笑っていた。

「あんたがまた、ここに連れてきてくれるんでしょ?」

その笑顔は、この先いつまでも忘れられないものになると確信するほど、美しいものだった。

 

 

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こんばんは。神無月です。タイトルと全く違う季節感のお話を冒頭に持ってきてしまったことをまずお詫びせねば…!

元はといえば「夏休み終わりました」報告を書くだけだったはずなのにこんなことになってしまいました。ここまで駆け抜けてしまってから言うのもなんですが、今回はFate/Stay NightUnlimited Blade Worksの2次創作となりました〜。

なぜいきなりこれに飛んだかというと、理由は明快でして、アニメをTSUTAYAでまとめ借りしてきて昨日一昨日で全話見てしまい、興奮冷めやらぬうちに書いてしまおう!と思ったからです。なにぶんアニメの描写しか知らないもので、文に書き起こしてみようとすると分からないことも多かったですが自分なりに書いてみることができたかなと思います。凛ちゃんかわいいですね!これからもちょくちょく書いていきたい。

夏休み前にFate好きの友人から勧められFGOを始めた私ですが、すっかりハマってしまいました。シナリオも壮大で飽きさせないですし、アニメもとても綺麗に作られていますし。とても面白い作品だなと思います。その壮大さゆえにまだ全然追いきれていないわけですが、とりあえず二週間後のHeaven's Feel公開を待ちつつUBW2周目行こうと思います。いや、おすすめされたプリズマイリヤを見るべきか?

 

何はともあれ、そんな夏の終わりの日記なのでした〜

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